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コロナ禍で変わったベトナム市場 コロナ禍で変わったベトナム市場


コロナ禍で変わったベトナム市場

先進国の1年は新興国の3カ月

今回約5年ぶりにベトナムに出張してその変化(時間の流れの速さ)に驚かされました。街も、人も、経済も急速に変化しています。
ニュースや友人から聞く話で変化を分かっていたものの、実際行って、現地の空気を吸って、周りを見てみてようやく現地の状況をキャッチアップできた気がします。

1. 意識が高くなった若者

夜の繁華街約5年ぶりにホーチミンの街を歩いてみてまず驚いたのは、若い男性が身なりに気を遣い始めていたこと、言い換えると、カッコよくなってきていることでした。
以前はお世辞にも身なりに気を遣っている男性は多いとは言えなかったですが、今では韓国文化の影響か、服装に気を遣ったり、うっすら化粧をしている男性もいました。
小売り業界の方から聞いた話では、以前は男性向け製品と言えば整髪料程度でしたが、直近では男性用スキンケア用品の売上が伸びているとのことで、これまではマーケットに存在していなかったニーズが顕在化してきていることを実感しました。
その新しいマーケットを狙って世界中からプレイヤーがベトナムに集まってきています。

また、ベトナム人の若者の社会に対する意識が変わってきていることを感じました。現地の学生と話した際に、彼らの口から出てきたのは、「環境、サステナビリティ、ESGといった取り組みはベトナムでも積極的に進めていくべきだ。その点に関心がある」と、いう言葉でした。以前では聞いたことがないトピックでしたが、コロナ禍を経て若者の関心の先が徐々に変化してきているのかもしれません。

2. 富裕層マーケットの本格到来

皆さんは今海外の日本料理レストランで“OMAKASE(おまかせ)”というものが流行っていることをご存じでしょうか。
日本で聞く“おまかせ”というのは、高級寿司屋さんなどで「大将、いい感じにおまかせで!」というと、大将がその日のおすすめ品をこちらの様子を見ながら出してくれる・・・というものを想像される方が多いのではないでしょうか。
しかし、今海外で流行っている“OMAKASE”というのは、その時々によってメニューが変わるものではなく、いわゆるコース料理を指します。そのOMAKASEコースを楽しんでいる方が今世界で増えているとのことです。

日本食 そして、そのOMAKASEがベトナムでも流行ってきています。
コロナ禍前と比較して、今のホーチミンにはベトナム人の方が経営する日本料理レストランが非常に増えており、そこでOMAKASEを楽しんでいるのは現地ベトナム人の方々です。
OMAKASEと言うだけあり、コースは少し高めの料金設定となっていますが、寿司や天ぷらなどを楽しんでいます。
反対に日本人が経営する日本料理レストランはほとんど見かけませんし、現地日本料理レストランで食事をする日本人もほとんど見かけません。コロナ禍以前とはすっかり光景が変わってしまったようです。現地では、食にお金をかけて楽しむ層が増えてきており、その層を狙った富裕層マーケットが拡大してきていることを実感しました。

3. 人材市場のグローバル化

今ベトナムには世界中の優秀なプレイヤー(人材)が集まってきています。
さらに、海外に留学・就職をしてスキルや経験を磨いてベトナムに戻ってきて活躍している人も見られるようになってきました。
それは給与面にも現れてきており、同じポジションの人を採用しようと思ったとしても、以前のような金額では採用できなくなってきており、優秀な人材を採用するには今の相場に沿った給与を出す必要があります。

また、日系企業の現地採用のポジションもグローバル化してきています。
私が2013年にJAC Recruitment ベトナムを立ち上げた際、取引先である日系企業から出ていた求人のほとんどはベトナムの日系マーケット開拓に関する求人であり、あまり語学力や専門スキルは求めず“元気でフットワークの軽い人”を求めている企業が多い印象でした。
しかし、最近は日系企業が日系以外のマーケットを積極的に開拓する必要が出てきており、当時は日本語話者を中心に行なわれていた募集が、スキルや言語など、かなり多様化した印象を受けました。

人材のマーケットがグローバル化してきていることを感じると同時に、日本人がベトナムで現地採用として働くことの難易度もまた各段に上がってきていることを感じました。

4. “日本らしさ”に勝機?

QRコードQRコード今後日系企業がベトナムで成功するためには“日本らしさ”を武器にするのが良いと思います。最近では韓国、中国、台湾といったアジア企業のプレゼンスが高くなっていて、日本企業はその勢いに付いて行けていないというのが現状です。そのような状況の中で、今後日本企業が再度勢いを取り戻すためには、“日本らしい”サービスを提供することではないでしょうか。

例えば教育業界です。ベトナムではすでに少子高齢化が進んできており、子どもの教育に対する関心というのは日に日に高まってきています。もしかすると日本よりも関心は高いかもしれません。そこへ日本の教育サービス業界の勝機があると思います。
学習塾であったり、教育教材であったり、マーケットにいち早く日本式の教育サービスを広げていくことができれば、まだまだ日本企業にチャンスはあると思います。
その他では、日本の家庭料理のニーズは高いと感じます。上述しましたが、今ベトナムでは日本料理レストランが非常に増えてきていますが、素朴な家庭料理を出す店は多くありません。何らかの形で日本に滞在していたことがあるベトナム人から、「あの時日本で食べた素朴な家庭料理の味をベトナムでも味わいたい」という話をよく耳にします。

上述した二つに限らず、文化・ビジネス・経済と様々な側面でベトナム国内における他国のプレゼンスが上がってきている中で、もう一段日本・日本企業が伸びていくためには原点に立ち返り、改めて“日本らしさ”を強みにしていくことが求められていると感じます。

まとめ

ベトナム市場は競争が激化し、それに伴い高付加価値ビジネスの市場の萌芽も始まっています。それ以外で私が気付かなかった変化も多々起こっているでしょう。コロナ禍を経てオンラインツールでの商談が主流になってきており、大きな不都合もなくビジネスは成立することが多くなってきました。しかし、少しでもベトナムに興味を持っている方はぜに現地に足を運んで、そういった変化を誰かに聞いた話やデータではなく貴方自身が五感で感じてみてください。

この記事の著者

この記事の筆者

加藤 将司

シニアアドバイザー


中国・上海師範大学卒業。大手人材サービス会社での人材採用業務、ベトナムで人材紹介ビジネスの立上げを行った後、2012にJAC Recruitment Vietnam の立上げのためにJAC Recruitmentに入社。2013年からJAC Recruitment Vietnamの社長を務める。
主に日系ベトナム現地法人向けに管理職層を中心とした人材紹介を行うとともに、社長として、ホーチミン、ハノイの2拠点、約 30名の組織のマネジメントを行う。

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